どうも。ハマちゃんです。今日は寿司屋で初夏によく見かけるとり貝について解説します。
・足が鳥のくちばしのような形状をしている。
・春と秋の2回産卵期がある。
・養殖も可能で、天然物より大きく育つ
目次
とり貝の生態を寿司屋が教える
では上記の特徴をもとにとり貝を詳しく掘り下げていきます。
足が鳥のくちばしのような形状をしている
上の写真を見てもわかるように黒い部分が鳥のくちばしのような形状
をしています。とり貝の名前の由来もこの形状からです。又、味も鶏肉に似ているからとの説もありますが、寿司屋の僕は似ていると思った事は1度もありません。
この黒い部分は他の動物でいう足の役割
をしています。実際に見たことはありませんが、外敵のヒトデなどから逃げる際にこの足を使ってジャンプし逃げることもあるそうです。
春と秋の2回産卵期がある
春と秋の2回産卵時期
がありますが、産地と環境にもよります。天然のとり貝は春に生まれる個体は少なく秋に生まれる個体がほとんど
だと言われています。それは産卵期とは言え、春に産卵する個体が少ないからです。
主に日本海側でとれるトリガイは秋に産卵する個体が多いと言われています。その理由は水温の低さにより、外敵の活動が少なく生存確率があがる為です。
又とり貝はオスとメスの区別がありません。1匹の個体はどちらの生殖器官も持ち合わせており、通常のとり貝の産卵数は1,000万個前後
と多くの卵を産卵することで繁殖します。
養殖も可能で天然物より大きく育つ
養殖の先駆けは京都の舞鶴
です。もともと、とり貝の有名な漁場ではあったものの、豊凶の差が激しく安定供給ができなかったことをきっかけに、畜養技術の研究
を始めたようです。
研究を重ねる中で京都府立海洋センターが稚貝の人工孵化を成功させ、特殊なコンテナに吊り下げて行う養殖方法
を編み出しました。
その特殊なコンテナの中には無煙炭という細かい粒のろ過砂を採用しており、月に1度点検交換することにより、とり貝がより大きく成長する為の環境を整ているそうです。
こうした緻密な研究と丁寧な育成手当を施すことにより大きく肉厚な養殖のとり貝
も市場に出回っています。
又、この養殖は毎年7月頃に養殖を開始し、翌年同時期に出荷する1年サイクルの養殖
です。
とり貝の特徴(生態)
とり貝が好む生活海域は、餌となる植物プランクトンが豊富で、波の静かな内湾域
です。
とり貝の寿命は約1年といわれていますが、中にはその倍近く生き残る個体もいる為、その限りではないようです。だいたいの個体が孵化から1年ほどで、7㎝ぐらいまで成長します。
北海道を除く日本各地に生息していますが、前述した環境下にある東京湾、愛知県三河湾、三重県伊勢湾、瀬戸内海
などが主な漁場となっています。
産地の特徴
前述した産地の特徴をご紹介します。
東京湾
東京湾でのとり貝の水揚げは年々減少
していると言われています。その背景に水質汚染による稚貝の死滅によるものが考えられます。かつては東京湾の千葉県富津のものが良品とされていたそうです。
とり貝だけに限らず水中の生物が生存、成長するのには水中の溶存酸素量が一定値を超えていなければいけません。要するに海中の酸素濃度が下がり、生き残れる環境下ではなくなってしまっているということです。
この状態にある水塊の事を貧酸素水塊といいます。
水中に溶けている酸素量のことで、有機物による水質汚染の指標になります。
ー貧酸素水塊ー
生物に影響が及ぶほど酸素濃度の低い水塊。境界値は4.3 mg/L で、この数値を下回ると底生生物の生息状況に変化を引き起こすとされています。
三河湾
三河湾でも他の産地と同様に豊凶の差が激しい
為、資源管理と調査がされています。
その調査をもとに漁師さんが解禁日を決め、漁獲されています。小ぶりながら甘味が強く、柔らかく春の至福の食材として重宝されます。
僕も愛知県のとり貝をよく使用しますが、噛み切り易い適度な歯ざわりとほのかな甘みがあり美味しい
です。市場では一般に湯通しまでの下ごしらえをしたものがパックされて流通していたりしますが、基本的には殻付きの生きた状態でしか仕入れません。
瀬戸内海・大阪湾
瀬戸内海、大阪湾もとり貝の有名な産地のひとつです。特に瀬戸内海はとり貝だけに限らず数多くの魚介類が集まる魚界の遊園地みたいなスポット
です。地形に特徴があり、太陽の光が海底まで届くため、プランクトンが増殖しやすく餌が豊富な環境はとり貝の成長には絶好のポイントと言えます。
大阪湾でも立派で美味しいとり貝もとれるのですが、たびたび春先に貝毒が検出
され、出荷停止措置が講じられることが多いです。それでも、出荷された物を食べたファンはまだかまだかと待ち構えるほどです。
トリガイの特徴(旬)
旬の時期で言うと、産地によって若干異なります。傾向で言うと太平洋側の産地では春先、日本海側では夏
という印象です。
したがって、春先から初夏、秋口まではシーズンとは言えますが店によって好みがあるので、とり貝を使用する季節は店ごとに違ってきます。
春先のとり貝は小ぶりながら甘味が強く、柔らかい。夏から秋にかけてのとり貝は身は大きいが春先のものと比べると甘みにかけると言われています。
とり貝と同じ科目のいしかげ貝という貝もよく寿司屋では取り扱います。
とり貝とよく形も味も似ている為、とり貝の代用などで使われます。
足がクリーム色なのが特徴です。
トリガイの特徴(まとめ)
今回はとり貝について解説してみました。
前述した養殖の大型のトリガイは、味も歯ごたえも大変良く、丹後の夏の高級食材として扱われています。しかし、天然トリガイは、豊凶の差が激しく数十万個獲れる年もあれば、全く獲れない年もあります。
その背景には人間による水質汚染の問題なども含まれている為、今度もっと深堀した記事を書いていきます。
ではまた。
寿司屋さんならとり貝について詳しいですよね?